Prologue



 響く、銃声。



 その音の方へ、私は振り返る。

 そこに、彼がいた。

 そこに、恋をした人がいた。
 そこに、大好きな人がいた。


 





















 彼は私に、銃口を向ける。
 私は彼に、銃口を向ける。

 大好きな人に、銃口を向ける。
 









 銃口の先、まっすぐに立つ彼。

 視界はぼやけたままで、彼の顔すら良く見えない。



 今、どんな顔してるの?
 どんな気持ちでいるの?
 悲しい? 嬉しい? もしかして怒ってる?


 ねぇ、生きたい? それとも死にたい?





 私は、どうなんだろう。


 今、私はどんな顔してる?
 どんな気持ちでいる?
 嬉しい? 悲しい? それとも怒ってる?


 ねぇ、私は生きたい? それとも死にたいの? 







 ねぇ、貴方はちゃんとわかってるのかな。

 もう私と貴方の二人だけだよ?


 あと一人殺せば、生きられるの。

 今まで散々殺してきたんだ。あと一人くらい、簡単でしょう?



 何を躊躇うのかな? どうして私も貴方も、すぐに撃たないのかな?








 まぁいいや。




 私は引き金に、指をのばす。

 私が生きるか、彼が生きるか、そのうちわかる。
 私がどうしたいのかも、そのうちわかる。


 私が失ったのものも、そのうちわかる。
 だから、

 私は引き金に、指をかけた。










 彼も同じように引き金に指をかけた、様に見えた。


 彼は、貴方は、私の大好きな人。

 彼を殺そうとしている私は、私を殺そうとしている彼に、そっと呟く。
 聞こえない声で、そっと、そっと。






















 ――とても、大好きでした。




























 だけど、そう。ただ、それだけのこと。

【残り2人】